※本記事の初出は2015年で情報が古くなっていたため、2025年時点の最新情報をもとに加筆・修正しています。
文化の違う海外に色を伝えるのは難しい
例えば一口にピンクと言っても、様々なピンクがあります。薄い桜色からショッキングピンクまで幅広く、女性向けの商品を扱う方なら、そのピンクの種類によって、売り上げ方も購買層も変わってくることはよくご存知のはず。しかし、中国の工場に「Shocking Pink」と言っても伝わりません。わかりやすく伝えるなら「Vivid Pink」ですが、それでも彩度の高いピンクは相当数ありますよね。懇意にしている通訳の方の話では、中国語でピンクは「粉红色」というそうですが、薄紫っぽい色やさくらんぼの色も同じ「粉红色」と表現するとのことで、「Pink」として捉えられる範囲は非常に広いようです。自分のイメージ通りのピンクを的確に、しかも日本語の通じない海外の取引相手に伝えるのであれば、お互いにとって共通の色見本を用意しなければいけません。
カラーチャートの種類と用途
PANTONE(パントン)
PANTONEは、米国パントン社が展開する色見本で、印刷業界・製造業・デザイン業界で広く使用されています。PANTONEには印刷用の「Formula Guide」、ファッションやインテリア向けの「Fashion, Home + Interiors(FHI)」、プラスチック向けの「Plastic Standard Chips」など、複数の種類があります。使用する業種や素材によって適切なチャートを選びましょう。
現在のPANTONEカラーチャート(印刷用ガイド)の価格はおおよそ2万円〜5万円前後です(2025年時点、円安傾向の影響もあり価格変動があります)。最新版では、最新のトレンドカラーも反映されており、デジタル版とのセット販売もあります。
DIC(日本国内メーカー)
DIC(大日本インキ化学工業)が提供する「DICカラーガイド」は、日本で多くの印刷会社やメーカーが採用しています。PANTONEと比較して国内での知名度が高く、建築やパッケージ印刷などの現場でよく使われます。英語表記に乏しい点や海外での普及度はやや劣りますが、日本国内向けの製品開発には非常に有効です。
RAL(ドイツ規格)
RALはドイツ工業規格に基づく色見本で、特にヨーロッパ諸国での建材・塗装・工業製品の分野で使用されています。全体的に落ち着いた色が多く、RAL Classic(4桁の番号で管理される基本色)とRAL Designという2つの主要シリーズがあります。公式サイトはこちら
カラーチャートを使用する
当社の商品企画の際、海外取引でよく先方から指定されるのは、やはり広く普及しているPANTONEです。多くの工場でPANTONEのカラーチャートが備えられており、無駄なやりとりを避けるためにも、それを使用して色を伝えることをおすすめします。上の画像のとおり、カラーチャートに色番号が振られているので、イメージしているカラーをカラーチャートから探し、工場にその番号を伝えるだけで認識を統一できます。
非常に便利な色見本ですが、ひとつ難点を挙げるとすると…
高いんだよね。値段が。
個人事業とか零細規模の会社にとって数万円って結構痛い。数万円あったら広告費に回したいってのが本音です。そのお金を払う価値があるとは言え、ちょっとしたブランド品を買うプチ贅沢の感覚ですよ。
それから上の画像のカラーチャートは、プラスティック製品の色見本としては適当ではありません。あくまで印刷用の色見本と考えるべきです。プラスティック製品のカラーを正確に指定したい場合は、このPANTONEのカラーチップを利用するのが最適と言えます。しかしながらこれまた桁違いに価格が高い。費用をケチる経費削減するなら印刷用のカラーチャートで十分と言えます。細かく色指定する必要がある業種はインテリアなどのデザイン製品などに限られますから、コンシューマ向けの製品であれば、多少のイメージ違いも許容範囲と言えると思いますが。
色指定の代替手段
物理的な色見本帳が手元にない場合でも、代替手段として以下のような方法が考えられます。
PANTONE公式アプリ(Pantone Connect)
スマートフォンアプリ「Pantone Connect」は、画像からPANTONEの近似色を抽出したり、カラーを保存・共有できる機能があり、便利なデジタルツールです。iOSおよびAndroidに対応し、基本機能は無料で利用可能です。
Adobeソフトでの色変換
IllustratorやPhotoshopなどのAdobe製品には、CMYK・RGBの値からPANTONEカラーに変換する機能が備わっており、社内にデザイン環境がある場合は非常に有効です。
Webベースの色見本ツール
下記のようなWebサービスを使って色の確認・共有も可能です:
- Coolors(カラーパレット自動生成)
- Color Hunt(配色アイデア集)
- DIC公式カラーガイド
ただし、画面上で見た色と実際に印刷・製造された色には差が出ることが多いため、最終的にはサンプルを送ってもらい確認することが重要です。
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