事業者でさえ誤解しているPSEマークのこと

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施行されて久しい電気用品安全法ですが、PSEマークにまつわる様々な誤解が存在します。事業者の間でさえ、PSEマークについての間違った知識が蔓延している現状で、消費者が電気製品の安全性を意識したり、賢い買い物ができるはずがありません。実際にどのような誤解があるのかまとめてみました。

※本稿は2015年が初稿ですが、その後の法改正等を鑑み、2025年に加筆修正を行いました。
>> 法改正履歴

「PSEマークの取得方法」なんて存在しない

販売者の商品説明などで「PSEマークを取得しています」といった表記が見られますが、これは図らずもその事業者自身が電気用品安全法のことを理解していないことを露呈しています。PSEマークは「取得」するものではありません。輸入・製造事業者が、電気用品安全法に定められた検査を行い、その記録を残し、基準適合性を確かめた上で、その義務を果たしたことを対外的に示すためにPSEマークを表示しているだけのものなので、国の機関からマークを買うわけでも、表示の許可を得るわけでもありません。

つまりPSEマークは「ちゃんと適合性検査をしましたよー」という事業者の自己申告なのです。

参考URL: 経済産業省「製造輸入事業者向けガイド」より引用

(4) PSEマークの表示(法第10条) 以上の流通前規制に関する義務を届出事業者が果たした証として、届出事業者が電気用品に、 (又はE)や (又は(PS)E)の表示を製品に付すことができます。[6.表示(P.64)参照] なお、PSEマークは、このように義務を果たした証として表示できるものであって、
「国から取得」したり、「PSE認証取得」するようなものではありません。

「PSEマーク表示には必ず認証が必要」という誤解

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左側が一般的な電気製品に必要なPSEマーク、右側が充電式の電気製品などに代表される、特定電気用品に必要な菱型のPSEマークです。左側の丸型の方に認証は必要ありませんが、右側の菱型のPSEマークについては第三者機関による認証が必要となります。

先述したとおり、PSE表示は、消費者に対する「事業者の自己申告」ですので、当然、PSE表示をしただけで認証を受けたということにはなりません。電気用品安全法でいう認証とは「外部の第三者機関で基準適合性を証明してもらうこと」です。余談ですが、基準適合性であって安全性の証明ではないのでご注意。

マークには丸型と菱型があり、丸型の場合は製品検査をしていれば認証がなくてもPSEマークが表示できます。丸型の場合は、第三者機関によるPSE認証は任意となります。当社で消費者向けに販売している、ユニガールのヘアアイロンUG-03STS(生産終了)は、丸型のPSEマークですが、海外のIntertekという認証機関で、日本国内向けの基準に適合していることを証明してもらっています。顧客の安心感のために、任意で認証を得ているというわけです。

反対に、充電式の電気製品など、経済産業省が特定電気用品と定義している電気製品の場合は菱型のPSEマークを表示する必要がありますが、これについてはJETなどの第三者機関による認証が必須です。

PSEマークで「安全性が証明されている」という誤解

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前項を言い換えれば、輸入・製造者が、適正に検査などの義務を果たしていなかったとしても、PSEマークを表示すること自体は簡単にできてしまう。本体にPSEマークのシールを貼るだけで良いのですから。

先述した、「PSEマークを取得しています」と表記している事業者は、電気用品安全法の内容や手順を理解していないということになり、裏を返せば、検査もしていないし、検査記録も残していないということを自ら証明してしまっているようなものなのです。どの口が、「PSEマーク付きなので安心です」なんて言えるのでしょうか?

消費者視点で言えば、現状ではPSEマークがあるからといって「安全な電気製品」とは言い切れないということを理解しなければなりません。そして現実にヤフオク!などでは、このような形だけのPSEマーク付きの危険な電気製品があふれていますし、マークすらないものも大量に流通していますので、事業者の信頼度などを十分に吟味する必要があります。

これらのことから、電気用品安全法は、消費者の安全のために施行された法律にもかかわらず、一部のEC市場においては完全に形骸化してしまっており、むしろ、「PSEマーク取得で安心」などと事実と異なる誇大広告やセールストークに利用されてしまっているという実態が見えてきます。

製品の電源コードにPSEマークがあれば良いというのは間違い

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丸型PSEマークの場合の話ですが、輸入物の電気製品によく見られる傾向で、電源コードの表面にも小さく「<PS>E」と表示されている場合があります。これが原因なのか「コードにPSEマークがあるから製品本体には必要ない」という誤解があるようです。

海外輸出用の電気製品を製造する工場は特に、各国の仕様にあった電源コードを、外部のコード生産工場から材料として仕入れることがほとんどです。その電源コードの生産工場が、組み立て工場への販売用として適合マークを表示しているだけで、実際に組み立てて完成する電気製品のためにPSEマークを表示しているのではありません。

しかしながら、電源コードの途中に電源のオンオフスイッチが組み込まれていることがあります。これは組み立ての工場側でコードを切断し、オンオフスイッチを取り付けているものです。経済産業局に確認したところ、コードの途中にオンオフスイッチがあるタイプのものであればそのスイッチ部分にPSEマークがあれば良いので、この場合、製品本体にはPSEマークは必要ないとのことです。

結局、電気用品安全法のPSEマークというのは、現在のところ、事業者の良心と誠実さに依存しています。事業者においては、「PSEマークをどこに付ければいいのか?」という視点ばかりで考えず、ちゃんと製品検査を行い、その結果としてPSEマークを表示するということを忘れてはいけません。

電気用品安全法(PSE法) 2015年以降の主な改正履歴

電気用品安全法の改正は、技術の進展や国際規格との整合性を図るために実施されており、特にリチウムイオン蓄電池モバイルバッテリーなどの新しい電気製品に対応するための規制強化が含まれています。

経済産業省「製品安全行政を巡る動向」 : 「電気用品安全法」

(2018年2月)モバイルバッテリーの規制対象化

リチウムイオン蓄電池を搭載したモバイルバッテリーが電気用品安全法の規制対象に。これにより、PSEマークのないモバイルバッテリーの販売が禁止された。

(2021年12月)電気消毒器の規制対象化

殺菌灯を有する電気消毒器について、器体外に直接殺菌灯の光線を照射する構造のものが電気用品安全法の規制対象として明確化。これにより、PSEマークのない電気消毒器の販売が禁止された。

技術基準の国際規格への整合化

電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について、国際規格等に準拠した基準(別表第十二)への一本化が進められた。

(2023年)海外事業者への規制強化

海外事業者が国内の輸入事業者を介さずに直接製品を販売する場合に、国内における責任者(国内管理人)の選任を求めるなど、インターネット取引の拡大に対応した規制が導入された。

(ソース:経済産業省「製品安全4法改正を踏まえた制度整備について」)

コメント

  1. 小山 有雄 より:

    ご指摘の通りPSEマークがれば安全と言う誤解が実証されました。

    100均「セリア」の延長コードで、ちゃんと <PS>JET マークが付いています。

    怖いですね。

    http://www.seria-group.com/info/20150924.html

    商品回収のお知らせ(延長コード)

    お客様各位 2015年9月24日 株式会社セリア

    弊社店舗で2010年11月から2013年12月まで販売いたしました「延長コード」におきまして、コードが破損し、スパークする事故が発生いたしました。同商品におきましては、発火・火災の恐れがあるため、このたび回収をさせていただきます。

  2. 輸入を考えています より:

    中国で製造されたCE/RoHS規格を取得している製品を輸入したいと思っている者ですが、記事で書かれているように「PSEマーク表示のための検査をしなければいけない」と悩んでいました。
    日本の検査機関でしかPSEに対応する検査ができないと思っていたので、海外の機関があるというのは知りませんでした。
    しかし、国内にも推奨される検査機関があると思うのですが、なぜ海外の検査機関を選ばれたのですか?費用面でしょうか?

    • ariaportal より:

      まず、検査と認証というのは別のものとして区別しなければならないのですが、弊社が丸型PSEマークを表示するにあたって、「任意」で「認証」を得たのが海外の認証機関だったということです。
      電気用品安全法に基づく「外観、通電、絶縁耐力検査」などは弊社内で行なっております。
      この点は誤解のないようにお願い致します。
      なぜ海外の認証機関を利用したかということですが、やはり主に費用面です。
      世界を相手としている中国の工場であれば、PSEの認証機関とも取引がある場合があり、その場合、大きく費用を節約することができます。
      認証には、工場の立入検査などもありますので、すでにその工場に当該認証機関との取引実績がある場合は、多くの検査が省略されることがあるとのことで、そういった意味で費用が安価に抑えられます。
      まずは、その工場に、PSEの認証機関と過去に取引があるかどうかお訊きになってはいかがでしょうか?バイヤー側で認証機関を探すより、その生産工場に訊いたほうが条件面で有利な認証機関を見つけられると思います。

  3. 株式会社アリアファーム様
    一般社団法人LED光源普及開発機構 代表理事の小林治彦です。
    LED機構では今期(第13期)LED製品のPSE監査法人研究会を立ち上げました。
    色々な資料をネットで検索中、貴社のページを拝見しました。
    よろしければ近々に情報交換が出来ましたらと思います。

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