OEMとODMの基本的な違い
OEM(Original Equipment Manufacturer)とODM(Original Design Manufacturer)は、いずれも製造委託の形態ですが、その役割には違いがあります。
区分 | OEM | ODM |
---|---|---|
製品設計 | 発注者(自社)が行う | 受託工場(メーカー)が行う |
ブランド名 | 自社ブランド | 自社ブランド |
製造 | 受託工場が行う | 受託工場が行う |
開発コスト | 比較的高い(設計費・試作費あり) | 比較的安い(既存設計の活用) |
自由度 | 高い(フルカスタマイズ可能) | 低め(元デザインに準ずる) |
ただし、後述しますが、ほとんどODMと同じ工程で委託製造したとしても、分類上OEMとされるケースもあります。OEMとODMの違いは、明確なようで実は線引きが曖昧であり、「どっちなのだろう」と悩むこともしばしば。身も蓋もないことを言ってしまうと、試しにOEM/ODMに挑戦してみようというテスト段階の方が、OEMとODMの厳密な違いを知ることにあまり意味はありません。
だから、この時点で「難しそう」とは考えないことです。オリジナル商品の生産を検討するにあたり、こういう分類があるのだという知識程度に留めておいてください。
OEMを選ぶべきケース
OEMは、「こういう製品を作りたい」という明確なコンセプトや設計を持っている場合に向いています。たとえば、以下のようなケースです。
- すでに人気のある自社製品の改良版を作りたい
- 機能やサイズ、素材などに細かくこだわりたい
- 独自性の高い製品ラインを構築したい
OEMでは、設計からパッケージまで細かく指定できる反面、設計スキルや試作コスト、時間がかかるという点に注意が必要です。
「コンセプトや設計」などと言われると難しく感じますか?
でも、皆さんは名刺を作ったことはありませんか?自分のお店のショッパーを作ったことはありませんか?
OEMと表現すると、一見難しそうに感じるかもしれませんが、サイズとロゴを指定して紙袋を作ってもらう/印刷会社の名刺テンプレートに自分の名前を入れて印刷してもらう。実はこれらも立派なOEMなんです。
もちろん、ビジネスで言うOEMとは、「製品を販売目的で製造する」ことが前提で語られますので、そんな事を言うと、頭カチカチの人に怒られそうですが、「名刺もショッパーも、広義のOEMである」ということでご理解ください。
ODMを選ぶべきケース
一方、ODMは、メーカー側がすでに持っている設計や仕様をもとに、自社ブランドとして製造してもらう方法です。以下のようなニーズに向いています。
- 製品アイデアはあるが、細かな設計まで手が回らない
- 開発スピードを重視したい
- 小ロットで試験販売したい
ODMの利点は、開発期間とコストの抑制です。ただし、他社と同様の製品になるリスクがあるため、ラベル・パッケージ・販売方法での差別化が重要になります。
OEMとODMの中間型もある
実務上は、OEMとODMを厳密に分けられないことも多く、OEMを基本としつつ一部デザインをメーカーに任せる「準ODM型」のような柔軟な発注もあります。
特に中国や東南アジアの工場では、顧客の希望に応じて柔軟に対応する体制が整っている場合も多く、交渉次第で最適な形を模索できます。
例えば、電気製品の事例で言えば、「あなたの工場のこのモデルを、日本仕様にしてほしい。AC100V 50/60hzでPSE準拠に」という指示のみで、具体的な回路設計等はあなた自身で行わず、ほとんどODM程度の工程しか踏んでいないにもかかわらず、分類上は「OEM」とされます。
どちらを選ぶべきか?判断の基準
OEMかODMかを選ぶには、自社の体制・目指すブランド戦略・予算などを総合的に判断する必要があります。
- 設計力がある/独自性を求めたい:OEM
- スピード重視/製造の知見がない:ODM
最初はODMから始め、ヒット商品が出たらOEM化して拡張する、といったステップも一般的です。
まとめ:製品開発のスタイルを見直そう
OEMとODMの違いを理解することで、自社にとって最適な製造パートナーとの付き合い方が見えてきます。小売りだけでは実現できない独自性・利益率を高めるには、製造の段階から主導権を握ることが重要です。
今後、自社ブランドを軸にビジネスを成長させたいと考えるなら、OEM/ODMはその第一歩となるはずです。
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