ベトナム輸入の物流と商習慣の違いとは?

ベトナムは近年、輸入先として注目を集めており、アパレルや雑貨をはじめとした様々な分野で調達先の一つとなっています。人件費の安さや日系企業の進出により、コストパフォーマンスに優れた調達先として期待される一方で、物流インフラや商習慣の違いが日本との間で誤解を生むこともあります。本記事では、ベトナムからの輸入を検討している方に向けて、物流の実務や現地の商習慣、日本との違いについて詳しく解説します。

ベトナム輸入の基本知識

ベトナムは中国に次ぐ製造拠点として注目され、特に繊維製品や家庭用品、電子部品などの輸入が盛んです。以下は日本がベトナムから輸入している主な品目の一部です。

品目 代表例 関税番号(HSコード例)
繊維・アパレル Tシャツ、バッグ、衣類 6109, 6204
家庭用品 プラスチック製収納、雑貨 3924, 9603
電子部品 プリント基板、センサー 8534, 9031
家具類 木製椅子、テーブル 9403

ベトナム輸入の傾向を見ると、アパレルや雑貨などの軽工業品が中心であり、価格競争力が高い一方でデザイン性にも優れる商品が多い印象です。特に家具などは天然素材を用いた加工技術に優れており、ナチュラル志向の日本市場とも親和性があります。また、近年ではスマートフォン関連の電子部品の生産拠点としても注目されており、韓国や中国系企業のOEM工場が数多く進出しています。

ベトナムの物流インフラと港湾事情

ベトナムには複数の国際港がありますが、地域ごとに特徴が異なります。主な港は以下の通りです:

ベトナム南部の主な輸入港は、ホーチミン市に位置するガットライ港(Cat Lai Port)です。かつては「ホーチミン港」と呼ばれた複数の港が市内中心部に存在していましたが、現在では都市機能の再編により、実質的な港湾機能の多くがこのガットライ港に集約されています。特に港湾の選定においては、「ホーチミン港」との表現よりも、実務上で主に使われる「ガットライ港(Cat Lai Port)」と明記することが重要です。

港名 所在地域 特徴
ガットライ港(Cat Lai) MAP ホーチミン市(南部) ベトナム最大のコンテナ港で、日本向け輸出の中心港。周辺には多くの加工工場が集積。
ハイフォン港 MAP ハイフォン市(北部) ハノイやバクニンなど北部工業団地の玄関口。中国国境にも近く、北部の取引に最適。
ヒェップフック港(Hiep Phuoc) MAP ホーチミン市郊外 急速に整備が進む新興港。中長期的にガットライの機能補完を目指す。

注意:ヒェップフック港(Hiep Phuoc Port)とハイフォン港(Hai Phong Port)は、全く異なる地域にある別々の港湾です。しかし、Googleマップで検索する際に類似した英語表記(“Phuoc” や “Phong”))や翻訳の誤認、または検索精度の問題によって、「ヒェップフック港(Hiep Phuoc)」と検索してもハイフォン港(Hai Phong)が表示されることがあります。

輸送手段は主にトラックですが、近年は鉄道輸送(特にハノイ周辺〜中国方面)も注目されつつあります。内陸部にある工場との連携では時間調整や輸送遅延に留意が必要です。

日本への輸送手段とその特徴

ベトナムから日本への輸送方法は大きく3つに分かれます。

輸送手段 特徴 所要日数(目安) コスト感
FCL(コンテナ単位) 自社専用コンテナで大量輸送 10〜20日 単価は安い
LCL(混載) 複数社とコンテナを共有 14〜25日 少量でもOK、割高
航空便 緊急輸送や高価値商品に使用 2〜5日 割高

特にLCLでは、梱包・積載方法が悪いと破損や遅延の原因になるため、現地フォワーダーとの連携が重要です。
なお、中国と比較すると、ベトナムの現地作業員は比較的丁寧に荷扱いをするという声もありますが、一方で港湾インフラの近代化や作業オペレーションの標準化という面では中国に劣る部分もあり、予想外の事故や遅延が生じるリスクは依然残ります。従って、日本語対応が可能な現地フォワーダーや日系物流企業とのパートナーシップを持った方が無難であると考えます。

ベトナムの商習慣とその特徴

メールのやり取りと意思疎通

返信が遅いことがあり、定期的にリマインドを送るのが基本です。特に祝祭日前後は連絡がつきにくくなります。担当者にもよるとは思いますが、日本との商習慣や仕事に対する価値観の違いを尊重する必要があります。

支払い条件と信用面

一般的にはT/T(電信送金)前払いが主流ですが、取引実績ができると部分前払い+残額後払いなどの交渉も可能です。L/C決済は中小企業では敬遠される傾向があります。

会議や対面交渉の重視

ベトナムでは顔を合わせた信頼構築が非常に重視されており、初回商談での訪問や対面ミーティングがその後のスムーズな取引に直結することもあります。日本以上に「人間関係」に重きを置く傾向があり、実際に工場やオフィスを訪れることで誠意を見せるという考え方が浸透しています。この点は、「迎える」文化である中国企業との取引でも同じ印象があります。

文化的な時間感覚の違い

全体的に納期意識はまだ発展途上であり、「時間通りに進める」ことよりも「柔軟に対応する」ことが重視される場面があります。これにより、日本的なスケジュール感とのズレが生じる場合もあります。納期にゆとりを持ったローンチを心がける必要があるでしょう。

必要書類と注意点

  • インボイス
  • パッキングリスト
  • 原産地証明書(CO)

書類の記載ミスが多いため、出荷前に必ず内容確認を。

言語とビジネスコミュニケーション

ベトナムの公用語はベトナム語(Vietnamese)ですが、ビジネスでは英語が広く使用されています。都市部の企業や輸出を行うサプライヤーでは、ビジネスレベルの英語を話す担当者が多くいます。ただし、地方の小規模工場やローカル企業では英語力にばらつきがあり、自動翻訳ツールを併用している事例も少なくありません。

そのため、英語でのやりとりでは以下のような点を意識するのが有効です:

  • シンプルで明確な英語表現を使う(例:”Please confirm shipment date”)
  • 重要な内容は画像や図で補足する
  • 仕様は事前に整理し、表や番号付きリストで伝える

また、生産工場とのやり取りで不安がある場合は、日系商社や現地通訳付き代行業者を利用するのも効果的です。

ベトナム輸入における実際のトラブルと注意点

  • 製品のバラつき:同じ品番でもロットによって色味や仕上げが異なることがある。
  • 誤訳・翻訳ミス:仕様書の誤読による製品違いに注意。画像付き仕様書が有効。
  • 関税分類の誤り:HSコードの違いにより関税率が変動し、想定外の費用が発生する可能性。

成功するためのベトナム輸入の実務ポイント

輸入初心者のための基本ステップ

  1. 相手先の信頼性を確認(サンプル依頼)
  2. 見積もりと納期を必ず書面で取得
  3. 必要書類を事前に確認し、日本語訳を用意
  4. 現地フォワーダーと綿密なやり取りを

商社・代行業者の活用

直接貿易に不安がある場合は、ベトナム専門の調達代行業者を利用するのも手です。価格はやや割高になりますが、トラブルの回避や交渉力の点で安心感があります。

まとめ

ベトナムは日本と比べて文化や商習慣が異なりますが、それを理解したうえで適切な対応を取れば、コスト・品質ともに魅力ある輸入先です。中国依存からの脱却を図る上でも、今後さらに重要性が増していく国といえるでしょう。

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