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「PSEマークの取得方法」なんて存在しない
販売者の商品説明などで「PSEマークを取得しています」といった表記が見られますが、これは図らずもその事業者自身が電気用品安全法のことを理解していないことを露呈しています。PSEマークは「取得」するものではありません。輸入・製造事業者が、電気用品安全法に定められた検査を行い、その記録を残し、基準適合性を確かめた上で、その義務を果たしたことを対外的に示すためにPSEマークを表示しているだけのものなので、国の機関からマークを買うわけでも、表示の許可を得るわけでもありません。
つまりPSEマークは「ちゃんと適合性検査をしましたよー」という事業者の自己申告なのです。
参考URL: 経済産業省「製造輸入事業者向けガイド」より引用
(4) PSEマークの表示(法第10条) 以上の流通前規制に関する義務を届出事業者が果たした証として、届出事業者が電気用品に、 (又は
E)や (又は(PS)E)の表示を製品に付すことができます。[6.表示(P.64)参照] なお、PSEマークは、このように義務を果たした証として表示できるものであって、
「国から取得」したり、「PSE認証取得」するようなものではありません。
PSEマーク表示には認証が必要という誤解
先述したとおり、PSE表示は、消費者に対する「事業者の自己申告」ですので、当然、PSE表示をしただけで認証を受けたということにはなりません。電気用品安全法でいう認証とは「外部の第三者機関で基準適合性を証明してもらうこと」です。余談ですが、基準適合性であって安全性の証明ではないのでご注意。
マークには丸型と菱型があり、丸型の場合は製品検査をしていれば認証がなくてもPSEマークが表示できます。丸型の場合は、第三者機関によるPSE認証は任意となります。当社で消費者向けに販売している、ユニガールのヘアアイロンUG-03STSは、丸型のPSEマークですが、海外のIntertekという認証機関で、日本国内向けの基準に適合していることを証明してもらっています。顧客の安心感のために、任意で認証を得ているというわけです。
反対に、充電式の電気製品など、経済産業省が特定電気用品と定義している電気製品の場合は菱型のPSEマークを表示する必要がありますが、これについてはJETなどの第三者機関による認証が必須です。
PSEマークで「安全性が証明されている」という誤解
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前項を言い換えれば、輸入・製造者が、適正に検査などの義務を果たしていなかったとしても、PSEマークを表示すること自体は簡単にできてしまう。本体にPSEマークのシールを貼るだけで良いのですから。
先述した、「PSEマークを取得しています」と表記している事業者は、電気用品安全法の内容や手順を理解していないということになり、裏を返せば、検査もしていないし、検査記録も残していないということを自ら証明してしまっているようなものなのです。どの口が、「PSEマーク付きなので安心です」なんて言えるのでしょうか?
消費者視点で言えば、現状ではPSEマークがあるからといって「安全な電気製品」とは言い切れないということを理解しなければなりません。そして現実にヤフオク!などでは、このような形だけのPSEマーク付きの危険な電気製品があふれていますし、マークすらないものも大量に流通していますので、事業者の信頼度などを十分に吟味する必要があります。
これらのことから、電気用品安全法は、消費者の安全のために施行された法律にもかかわらず、一部のEC市場においては完全に形骸化してしまっており、むしろ、「PSEマーク取得で安心」などと事実と異なる誇大広告やセールストークに利用されてしまっているという実態が見えてきます。
製品の電源コードにPSEマークがあれば良いというのは間違い
丸型PSEマークの場合の話ですが、輸入物の電気製品によく見られる傾向で、電源コードの表面にも小さく「<PS>E」と表示されている場合があります。これが原因なのか「コードにPSEマークがあるから製品本体には必要ない」という誤解があるようです。
海外輸出用の電気製品を製造する工場は特に、各国の仕様にあった電源コードを、外部のコード生産工場から材料として仕入れることがほとんどです。その電源コードの生産工場が、組み立て工場への販売用として適合マークを表示しているだけで、実際に組み立てて完成する電気製品のためにPSEマークを表示しているのではありません。
しかしながら、電源コードの途中に電源のオンオフスイッチが組み込まれていることがあります。これは組み立ての工場側でコードを切断し、オンオフスイッチを取り付けているものです。経済産業局に確認したところ、コードの途中にオンオフスイッチがあるタイプのものであればそのスイッチ部分にPSEマークがあれば良いので、この場合、製品本体にはPSEマークは必要ないとのことです。
結局、電気用品安全法のPSEマークというのは、現在のところ、事業者の良心と誠実さに依存しています。事業者においては、「PSEマークをどこに付ければいいのか?」という視点ばかりで考えず、ちゃんと製品検査を行い、その結果としてPSEマークを表示するということを忘れてはいけません。